ふ、と短い息を口から漏らしたらアレルヤの動きはぴたりととまった。同時にずぐりと痛みは押し寄せるので止めなかったほうがいいんじゃないかって思えてくる。肩にかかっているアレルヤの髪は汗で少しぴったりはりついていてそれが何故かあたしはえろいなあ、と思った。えろいなあ。 アレルヤが心配そうな顔でこっちを見てくる。でもアレルヤ、君も眉間に皺よってるよ。あたしのせいでいたいのかもしれない。だとしたらごめんね。上手くなくて。あたしの中にはいっているアレルヤのはぴたりととまって動きもしない。あたしのぴったり額に張り付いた髪をゆっくりと掻き揚げてくれるアレルヤ。下半身を動かさないように慎重に。 「痛い?」 「・・いたくないよ」 「・・嘘つき」 眉をひそめて、ほら、アレルヤの顔はすごく綺麗だけど目とか細いし人相はロックオンとかと比べたら悪いから、って、ああ、他の男の人を話しに出したらアレルヤは機嫌が悪くなるんだよね、ごめん(かわいい)、なんだか怒ってるみたいに私を睨んでるくせに声だけはすごくか細くて悲しい声だったので私はどうしてよいのかわからなくなるよ。 「・・怒ってる?」 「怒ってないよ」 ふ、って笑うけど、それもすごくかっこいい(のに、なんで声が悲しいんだろうね?) シーツをぎゅうと握り締めてた手をアレルヤの背中に回してちょっと力を入れるとなかのアレルヤがかすかに動いて、痛い、っていうかその動いた部分が裂けた感じがする。あたしがううっと呻くとアレルヤはまたぴたっと止まる。 「」 「・・・なあに」 「初めてでしょ」 「・・ばれた?」 「ばれるよ」 声が本気で怒っているのであたしは顔をあげられない。ぼうっとした照明ひとつしかついてないけど、ぼうっとしたように見えるのはそれはあたしの目がうるんでいるからで、照明一つといってもベッドランプだからあたしの表情なんて丸見えだろう。顔をあげたくないからずっとアレルヤの胸に顔を押し付けてたら「」幾分か強い声で名前をよばれてそろそろ顔をあげる。 「・・きらいになった?」 「そんなことで僕が君を嫌いになると思ってるの?」 「・・おもわないけど」 「じゃあ声も我慢せずに出していいよ。痛かったら僕の肩も咬んでいいから」 「アレルヤはやさしいなあ」と呟くと「は可愛いよ」とかいう。かわいいことないよ。だって今たぶんあたし必死で痛くて意識ふっとびそうでそんで若干気持ちよくてあと嬉しくて何が何だかわからずに、酷い顔してるんだ。アレルヤからはあたしの顔丸見えでしょう?アレルヤは綺麗な顔だし、こんなときでもちょっと眉潜めたり、うって小さく呻くだけでもかっこよくてなんだかかわいくてあたしの下腹はきゅんきゅん言って、あああああれ、あたしなんかこういうことしたりするより、アレルヤのそういう顔見てるほうが気持ちよくなれるかもしれない。変態だ。 「やばいな、あたし変態だ」 「が変態なら僕はド変態だ」 「ずるいなあ」 「何が?」 アレルヤは動かずに辛抱強くあたしを待ってくれている。 「アレルヤ一人かっこよくて、あたしもうどうしたらいいかわからないよ」 すごく微妙な顔をした。あ、照れてる。 「僕はかっこつけなんだ」 「かっこいいからもうかっこつけなくていいと思う」と言えばアレルヤは「ああもう、」と頭をくしゃくしゃしたい顔をして(この顔はアレルヤのもう一人と良く似ているね)、それから情けなくへにゃあ、って笑った。(うう、かわいいかわいいかわいいよう) 「僕すごい我慢してる」 「ぅえ?!ご、ごめん、もう大丈夫だから」 「大丈夫、焦らなくていいよ、大丈夫」 あたしひとりが痛くてなんかもういろいろ裂けちゃって血がだらだらしててもアレルヤが気持ちよければほんとはいいんだけどなあ!と思うけれどこんなに君が優しくちゃあたしは甘えてしまう。 だいじょうぶだ、といわんばかりに口にがぶりとむしゃぶりついたら、中が揺れてちょっと意識が飛びかけた。けどアレルヤもあたしに食いついてくる。今まで我慢してたのが嘘のように、なかはあたしがいたくないようにぴったり止めているのが嘘のように、口にむしゃぶりついてくる。自分でしかけたことなのにあたしは何がなにやら既にわからなくて、必死にアレルヤの唾液を舌を吸う。それが酸素みたいに。ほしくてほしくてたまらないみたいに、がっつく。もう今までじゃ考えられないほどの水音がして、昨日まで触れるだけのキスだけだったのがうそのような気さえした。ぎゅうう、って腰にしがみ付いたらアレルヤもあたしの肋骨が折れそうなほど強く抱きしめてくる。何時もは「潰してしまいそうだから」だなんて言って優しくしか抱きしめてくれないから、この痛さは酷く心地よい。 ゆる、とアレルヤが動いた時にはもう全然痛くなくて、それよりかなんかもうあたしの口からなんか変な嬌声?喘ぎ声?すごい高いのが飛び出すから、もうあたしの喉は壊れてしまったんじゃないかとおもうほどだ。 ぱち、とアレルヤと目が合って、アレルヤはにっこり笑う。離さないよ、みたいな感じで、弱弱しさがなくて自信に満ち溢れてる、のに「痛くない?」声はものすごく悲しくて静かなのだ。ああ、すきだよ。すきだよ。だいすき。稀代の大馬鹿者一人、アレルヤはばかじゃないからあたし一人、死ぬほど君が好きすぎてとろけそうです。いっそ溶けてしまえたらどれほどいいかな?とけてとけてとけてもうなにもわからなくなればいいのに。 「いたく、ない、よっ、うぁあれる、や、アレルヤ、ぁ」 「、、」 マンガやドラマじゃ最期に愛を囁くんでしょ?それがあたりまえって思ってたけれどそんな余裕はありそうもない。気づけば破けてしまいそうな喉で荒い呼吸を繰り返して、アレルヤの肩にもたれている。 シーツに血のしみみたいなのがついていたのであわわ、と思ってアレルヤを見たら気づいたらしくてちょっと笑って「皆に気づかれないように洗濯しようか」だって。はじめてというものはいろいろややこしくて大変なものなのだ。 「・・ごめん」 「何が?」 「はじめてっていわなくてごめん・・ややこしくてごめん」 「何がややこしいの?」 アレルヤがあたしをぎゅうと抱きしめた。痛い。今日はすごく痛く抱きしめるんだね、と思ったけど口には出さない。出したらアレルヤはきっと腕の力を緩めてしまうからだ。 「僕はのはじめてがもらえてものすごく嬉しいよ」 「・・そう、かなあ」 言われた後でものすごく恥ずかしい台詞だなあと思ってアレルヤの顔を見ようとしたけど「見るな」ってこっち向けないぐらいきつくきつくあたしを抱きしめた。ええっすごく見たい!と思ったけど痛く抱きしめられるのがすきなあたしは何も言わない。 「ふふふ」 「なに笑ってるの」 「笑ってないよー」 「笑ってるよ」 「ふへへへ」(だってお耳が真っ赤なんだよアレルヤ) 「・・僕の」 「うん?」 「僕のはじめても君にあげれればよかったな」 腕にこめられた力はきつくてきつくてもうすぐあたしの体はみしみし言うほどなのに、声が縋るように消えるように悲しくて小さいんだ。なんでなんだろう。アレルヤ、ねえなんで? 「うん、ほしかったかもしれない」 「・・・そっ、か」 「・・・でもねえ、アレルヤといれることがあたしは奇跡だと思ってるから」 充分満足だよ。おなか一杯で、もうこれ以上アレルヤが何かくれたらあたしはきっと破裂しちゃうね。 そう言えばアレルヤは、照れたように噛み締めるみたいに呟く。 「そっ、かあ」 「うん」 「は可愛いすぎるのがいけないね」 「アレルヤはかっこよすぎるのがいけないね」 言ってから照れてまたお互い顔を見られないようにきつくきつく抱きしめる。すきだよ。何度でも言おう。すきだよ。あいしています。 |